高い空/真心ブラザーズ

“空”にちなんだ真心ブラザーズの曲と言えば、「空にまいあがれ」がある。この曲は音楽ファンのみならず、幅広く知られている名曲だ。以前、NHKの教育プログラム「天才テレビくん」を見ていたら、出演している子供達が声をそろえて、この「空にまいあがれ」を唄っていて驚いたことがある。


だけど、他にも“空”を唄った真心の名曲がある。それが、アルバム『KING OF ROCK』に入っている「高い空」だ。


この曲が唄う場面は、親しい人が亡くなった後の火葬場で、「僕」が、「キミのけむり」の昇っていく「高い空」を見上げる、というものだ。
悲しい。とても悲しい場面。だけど、倉持陽一の声はちっとも湿っていない。カラっと晴れている。他の曲と同様に肩の力は抜けていて、でも伸びやかに歌い上げてるヨーキンの声。
歌詞もメロディもそうだ。焼かれた煙が「あっけないくらいわずか」だった、とか、ふざけた時にやるような舌を鳴らす「コッ」って音が入ってたり。乾いているなぁと思う。“死んだ”という事実が、ポーンと突き放されて、そのまま剥き出しで放り出されているようで、余計に“誰かが死ぬ”ということが浮き出して見えるようだ。
とりわけ印象的なフレーズは、

お酒を呑んで 僕は 笑った  お酒を呑んで 僕は 笑った

という部分だ。
「僕」は、悲しくないから笑っているんじゃない。人が悲しそうに振舞っていないからといって、その人が悲しくないということにはならない。そうするしか成す術がないから、そうしているのだ。
子供の私は、この曲を聴いて、“どうやらこれが本当のことらしいなぁ”と感じた。悲しいときに、わざと悲しい気分を盛り上げるなんて、本当に悲しい人はそんな事するハズがないのだから。


悲しいことを、悲しげな演出で盛り上げるんじゃなくて、悲しいことは、ただ、そこにあるだけで悲しいんだ。それはもうしょうがないんだから、私達はただただやり過ごすしかないんじゃないか。何か出来ることがあるんだとすれば、それは「お酒を呑んで笑う」。それぐらいの事だろう。